秋田の名物といえば「きりたんぽ」ですね、スーパーや土産物屋でも見かけます。ただし、よく売っているレトルトのセットで作ってみた人は、恐らく「なんだこれ、醤油スープにモサモサのご飯の塊を入れただけじゃないか」と噴飯汁まみれになるでしょう。秋田県出身の私もそう思います。それはきりたんぽ「風」鍋であって、不味くて当然なのです。何故なら本物のたんぽやスープは賞味期限が数日しかないから。
秋田に行けばスーパーでも市場でも比内地鶏・鶏ガラ・作りたてのたんぽが売っているので、旅行ついでに買って帰るのもアリです。
そうでなければ通販。おすすめは大館市が本店のスーパー「ITOKU」で扱っているセットです。3人前で5,000円近くしますが、ちゃんとした品物はこれくらいの値段がして当然なのです。
どうしても身近な材料で作りたい場合は、最低限以下のコツを守れば美味しくできます。不味いきりたんぽ鍋を作られて勝手に評価を下げられちゃあ、秋田県民は悲しくて雪中割腹しちゃいますよ。
レトルトの出汁だけじゃ駄目!
レトルトや薄めるタイプの出汁は、どんな種類の出汁でもそうですが、保存性の為に塩分濃いめ・旨味薄めで作られています。そこで、お湯でなく鶏ガラスープで割ってやればいいのです。地鶏の鶏ガラはあまり見かけることはないと思うので、安いガラでもたっぷり入れれば十分です。出汁を取った後のガラに塩をつけて食べるのはウチだけ??
ちなみに、具として白菜や椎茸は入れません。出汁の邪魔をするからです。
地鶏を使う!
比内地鶏は肉屋に注文しなければ手に入らないと思います。ただ、地鶏であればどれでも十分旨味がでます。ブロイラーの若鶏と、比内地鶏の差は大きいですが、地鶏同士の差は殆どありません。たっぷり入れて、黄色い脂が鍋に浮くくらいが理想です。きりたんぽ鍋は上品な料理ではないのです。
たんぽはホンモノを使え!無ければだまこにすべし!
理想はつくりたてのたんぽですが、これは賞味期限が数日なので、秋田県内のスーパーでしか売っていません。次に真空パックで1週間程持つものもありますが、必ず原材料があきたこまち100%のものを選んでください。県外のスーパーや土産物屋に売っているのが、原材料に小麦粉や片栗粉を含むガッチガッチのもので、これは「混ぜモン入り」として秋田県民に軽蔑されている代物です(笑)。レンジで温めれば柔らかくなりますが、モソモソした食感ですぐ溶けてしまうので、全く美味しくありません。
どうしてもいいたんぽが手に入らない場合は、だまこを作ることをおすすめします。たんぽは炊いた米を杉の木に巻き付けて炭火で焼く手間がかかりますが、だまこは「手抜き版」で、米が炊けたらすりこぎや麺棒で軽く潰し、一口大に丸めるだけです。
下手なたんぽよりも美味しいですよ。たんぽが無くなって汁だけ残った時も、これを作れば最後まで楽しめます。
きりたんぽ鍋って・・・面倒?
そうです、きりたんぽ鍋は面倒な食事なのです。ハレの日のお客様用の食事なのです。
亡き祖母さんは孫が来るとまず鶏舎に行って一匹〆ることから始めました。付いてくるなと言われても好奇心が勝るもの、仄暗い鶏舎で見てしまったものは…
叫びながら羽根をむしられ(生きたままだと余計な血が残りにくいらしい)、果ては首をひねられて絶命するニワトリ…
このトラウマのせいか、私は全ての生物を食べ物としてしか見れなくなってしまいました。だからイヌネコを可愛がることができません(不味そうな体型だから)。
鶏を捌き、ガラをストーブの上で半日煮込んで、夜にきりたんぽ鍋が出てくるのです。そんなゆっくりしたペースで作るものなのです。だいたい雪に埋もれて暇してるので。
ちなみにハタハタも北陸産・北海道産がありますが、秋田産は系統が違うので、ブリコが濃厚で柔らかいです。ただし漁期が12月のみなので、秋田県以外で出回ることは珍しく、あっても高級魚となります。これも県外産の固いブリコとパサパサの身を経験して食わず嫌いになる人が出るパターンですね。
ぜひ秋田の美味しいものを食べて秋田を好きになってほしいですね。住めと言われれば私も激しく断りますが(笑)。冬の男鹿や能代あたりの旅館だと、きりたんぽ鍋・ハタハタ・温泉が同時に楽しめますよ。
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